「らしく、ぶらず」『THE Q』が検証する、大人が「ももクロ」にハマる理由(2/2) - 日刊サイゾー
これこそが、ももいろクローバーZだ。「一生懸命」だからいいわけじゃない。「楽しむこと」に一生懸命だからいいのだ。多くの場合、「一生懸命」にはある種の悲壮感が漂う。けれど彼女たちには、それをほとんど感じることはない。なぜなら「一生懸命」を心底楽しんでいるからだ。だから見てるほうも、その楽しさに溺れることができるのだ。  ライブ前、メンバーやスタッフたちと円陣を組んで、百田が叫ぶ。 「楽しむ準備はできてるか!」 ...

あらま、サイゾーがももクロホメてる珍しい…。
この間の『THE Q』の感想ですね。
捉えず内容の前にちゃんと作ってましたねと言うのが感想。

ももクロも色々な所で取り上げられたけど、なかなか時間が取れなかったり、最初に結論ありとか、現象のみとか、表層しか観てないような物が多かった様に感じます。
一方、コアなモノノフはももクロChanやネットの動画等で彼女たちの裏も表も知ってる訳です。
ただし、運営側の意向だと思われるけど絶対見せない部分もあったりするんですが…。

そのギャップがある意味、ももクロちゃんと世間のギャップであり、モノノフが深くハマる要因でもあるように感じます。
世間的にはせいぜい紅白の1年まえぐらいに突然出てきた変わったアイドルって感じだし、モノノフに取ってはちゃんとステップを確実に上がってきた苦労人というギャップ。

よく判らない人はゴリ押しなんて言ったりする訳ですよ。
彼女たちがテレビで頻繁に観られるようになり始めた頃にはもう、すでにさいたまスーパーアリーナを満員にしていたのにねぇ。

まあ、正直に言ってしまえは彼女たちがここまで売れたのは時代と上手くシンクロできたというのは大きいと思います。
今、音楽業界は転換期にあります。
とにかく、CDが売れない、それはもう、笑ってしまうほど売れないんです。
大御所やテレビに頻繁に出てる人たちも実は売れていない。
売れてるのはAKB系列とジャニーズぐらいでしょう。
しかし、そのジャニーズでさえ最近では苦戦が伝えられます。

AKB系列に関してはCDが売れてるんではなく、CD付き握手券が売れてるに過ぎない。
まあ、あの売り方とシステムは発明ではあったと思うけど、音楽が売れていないのは事実でしょう。
AKBには代表曲があるって言い方もあるみたいだけど本当にみんなが好きな曲なんでしょうか?
TVやメディアで何度も流れてるから刷り込まれてしまってるだけじゃない?
その証拠にサビの部分はすぐに出てきても全曲通して歌える人は凄く少ないと思いますよ。

そんな音楽業界のトレンドは今、ライブになっています。
コピー出来たり、何度も繰り返し聴けるものよりも、ライブの一回しかない希少性を求めるようになってきました。
その背景があってのアイドルブームであり、アイドル戦国時代だった。
それと安室奈美恵やスピードによるヒップホップ系のダンスブームでダンスを始めた人たちがちょうど指導者になり時期に来ていて全国でダンススクールが乱立したのが大きかったでしょうね。
ダンスを習って人前で踊るようになれば必然的に芸能人を目指すのは必然でしょう。
ダンスがどれだけ上手くなっても現状、それではご飯が食べられないからねぇ。

本格的なミュージシャンのライブであれば楽器や音響、会場など簡単にライブが行えないけど、アイドルなら最悪、場所(それこそ路上でも)さえあれば音響なんて最悪、ラジカセで言い訳です、実力だって折しも湧き上がったAKBの様に制服で踊ってれば深く求められる事はなくなったのです。
しかもステージ衣装も制服で良い時代が長く続いたので衣装代も対して掛からない。
参入の障壁が下がっての乱立、これがアイドル戦国時代の正体です。
本当の意味で吉田豪さん達が言っていたアイドル戦国時代は意味合いが少し違うのですが、マスコミがいうアイドル戦国時代のはこんなモノです。

その中でももクロちゃん達は勝ち上がって来たのです。
初期の頃は握手会もしたし、チェキ会もした、衣装だって制服の事が多かった。
どこにでも居るような三流アイドルでした、いやある意味アイドルですらないレッスンの延長でもありました。
しかも大手事務所の割には傍流でアイドルグループ経験のない窓際にいたマネージャーでした。
とはいえ、マネージャーは沢尻エリカを育てた敏腕でした。
経験がない分、試行錯誤することで他のアイドルとは違った独自路線を走ることになります。
変化を嫌うファンなどには嫌われたり、バカにされたりしたけど(今でもあるけど)それが他のアイドルとの差別化に繋がります。

そしてこれは偶然なのか、必然なのか知れませんが大量の動画が記録されていてそれが動画として上げられました。
他の事務所とかだと、早速削除に動くのですが、なぜかももクロ陣営は積極的に削除には動きませんでした。
これは戦略なのか、単純に見過ごしていたのかは今となっては判りません。
ただ、これがももクロちゃんが売れる要因のひとつになります。
動画が大量に残ってることで途中からファンに成ってもももクロの歴史を動画で遡る事が出来るのです。
バーチャルな意味で誰でも古参ファンになれる訳ですね。
これがある意味、モノノフが他のファンより熱い理由かも知れませんね。

ただし、ここまではももいろクローバーの歴史であって、ももいろクローバーZの歴史ではありません。
ここまでなら他のアイドルでも到達できたかも知れません。
実際、この辺りまではスマイレージや東京女子流はほぼ横並びだったと思うのです。

彼女達の転機になったのは誰もが認めるだろうけど早見あかりの脱退でしょう。
『THE Q』で部活という言葉を多用してましたがそれに習うのであれば、県大会を勝ち抜いてこれから全国大会だと言う時にエースのピッチャーが部活を辞めた様なものです。

この時の絶望感は例の脱退の告白ビデオのあーりんの表情を観ればどれだけ深いものだったかが判るでしょう。
人間、あまりにも唐突に絶望がやってくると表情を無くしてしまうんですねぇ。
そして最年少の立場からはあの時点では何も言えなかったんでしょうね。
ただ、ただ無表情で涙を流すあーりんはまさにあの脱退告白ビデオがドキュメントである事を思い知らされます。

この後、涙、涙の春の一大事があるのですが、これはある意味最大のピンチでした。
感動的であればあるほど、第一部完的な区切りがついてファンが離れてしまう危機にあった訳です。
そこで、運営側はZへの改名を行い、次の日には七番勝負という連日のイベントを行います。
ももクロちゃんやファンに一息付かせる暇を与えなかったのです。
Zへの改名は折角の感動的な場面をぶち壊したと大ブーイングでしたが、そのブーイングが関心を継続させたのですから運営のしたたかさを今になって感じますねぇ

この出来事が他のアイドルグループとももクロとの違いというか差を付けた原因になったんだと思います。
この辺りから、頼れるエースを失った事から各人が自覚を持つようになった。
七番勝負で早見あかりからMCを継いだあーりんがMCが思った様に出来なくて楽屋で泣いていたって言うのは自分の役割に最年少でありながら自覚を持ったという事でしょう。

佐々木彩夏2この出来事を超える事で今のももクロが出来上がったと言ってもいいんじゃないかなぁ。
ある意味、プロになったということでしょう。
そして、春の一大事を終えた頃から事務所も腹をくくったのでしょう。
この辺から事務所のプッシュが始まったんだと思います。
これ以降は会場の拡大路線が始まります。
このプッシュは大手事務所だから出来ることでしょうねぇ。
小さな事務所ではここでプッシュ出来ずに中堅で終わってしまうグループやアーティストも多いですからねぇ。
佐々木は「一生懸命やるのってカッコいいよね」と言う。

「学校とかで『ちょ、ダリィ』とか言う人いるじゃないですか。絶対一生懸命やってると楽しいのにって、ももクロやってるとすごい思う」と。
上記の言葉はあの日、絶望の涙を流していた少女と同じ人の言葉とは思えないですよねぇ。
彼女たちは絶望や苦難を沢山経験してるんだと思うのです。
ただ、それ以上に楽しい事も経験出来てるんだと思います。

24時間放送の深夜の夏菜子、れにちゃん、杏果のバカ騒ぎの合間の「灰とダイヤモンド」のVTRを観てる時の杏果の真剣な表情も忘れられないですねぇ。
あの表情には自分のパフォーマンスを厳しく見る目と映像から受ける感動を同時に見てる目だったと思います。
あんな表情のアイドルなんてなかなかいないと思いますよ。、
「絶対一生懸命やってると楽しい」と言い切れる所に彼女たちの強さや愛される秘密があるんでしょうねぇ。